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いや別にね。
セラと結婚していることを恥じているわけじゃないんですよ。
フェノンも含め自慢したいぐらい綺麗で可愛くて、俺には勿体ないと思えるのだけど、現在が試合の最中であることを考えると顔を隠したくもなるだろう。セラはわりとポンコツなところあるからなぁ。
ちなみに試合の行方なのだが、クレセントさんが「早く終わらせて根ほり葉ほり聞くッス」と宣言してから三十秒も経たずに決着が着いた。ダメージが無いのでこちらのチームはゾンビアタック状態なのだけど、全員まとめて四方に吹っ飛ばされた時点で、俺は試合終了の合図をした。骨折じゃ済まない吹き飛ばされかたをしたからな。
で、現在。
怪我はないものの、体力が削られてクタクタになった四人は地べたにへたり込んでおり、それと対照的に元気満タンのクレセントさんがこちらに詰め寄ってきている状態だ。
「SRさんこっちで結婚したッスか!? アッチでは未婚!? というか実年齢何歳!? ちなみに私は享年二十四歳ッス!」
いやいや今はこうして生きてるんだから享年だなんて言葉を使うんじゃない! なんかホラーな気配がするじゃないか!
――しかし、思ったより年下だったなクレセントさん。
プロとして長く活躍しているイメージだったから、もう少し上だと思っていたけど……もしかしたら十代のころからプロゲーマーだったのかもな。まぁあの活発な若々しいキャラの感じから、年下だろうなとは思っていたが。
「あはは……俺は知っての通りテンペストが恋人状態だったんで、結婚なんてしていたらとっくに愛想つかされてますよ。俺は三十三の時にこっちに来たんですが、身体は十八歳に若返ってました。いまは二十一です」
「アバターと現実は違うッスもんねぇ……私こんなに美少女じゃないッスよ」
あはは……と渇いた笑いを漏らしながらクレセントさんが言う。そこは俺もあまり触れられたくないところなので、苦笑してから話を逸らすことに。
「クレセントさんは何歳になってます? ステータスで見れますよ」
「マジっすか? えっと――あっ、自分は二十歳に若返ってるッス! リアルでもこっちでも年下ッスね! だからSRさんはいますぐ敬語止めるッス!」
「えぇ……まぁ、善処します」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「――っていうわけで、この世界の人はボーナスのこと知らなかったから、Bランクで躓いてたんだよ」
「はー、たしかにステータスが見えないと気付けないかもしれないッスねぇ。自分たちはそれが当たり前だからなんだか不思議な感じするッスけど」
引き続き俺はクレセント――敬語をストップするついでに名前も呼び捨てに変更させられた――と話してるのだが、近くにはセラや迅雷の軌跡の面々もやってきており、俺たちの会話を懐かしむように聞いている。みんな地べたに座っている状態だ。
ちなみに帰還するためのウィンドウは表示されているが、イデア様が配慮してくれたらしく、時間制限無しという状態になっていた。ありがたい。
「一ヶ月っていう制限時間がある状態で、Fランクだけでレベル30まで上げるってそんな悠長なこと言ってられないだろ? だから上のランクに入れてもらうように交渉したんだ」
「ほうほう……SRさんのことだから、交渉という名の力技に出たわけッスね?」
「俺ってそんなキャラなの!? いや、まぁ一騎打ちさせてくれって言ったんだけども」
「やっぱり力技ッス!」
「なんか癪だな――まぁそれはいいとして、その対戦相手っていうのがレベル六十の剣豪で――」
「SRさんはその相手を初期ステのままボコボコにしたと――」
俺の言葉に被せて、クレセントがそう言ったところ、
「え、エスアール! その話は止めてくれぇ!」
俺たち会話に、たまらずといった様子でセラも入り込んできた。すまんセラ……でも俺とお前の出会いを話すうえでは切っても切り離せない部分だったんだよ。
「うえぇ!? もしかしてその剣豪って――」
「わ、私だ……」
顔と耳を真っ赤にしたセラが、萎れた声で呟く。ごめんよ。
まぁここを詳しく話してもセラを苛めるだけになりそうなので、話を進める。
「そこで俺はセラと初めてあったんだよ。で、異世界人の俺を放っておけないってことで、セラは俺の護衛に付くことになった」
「SRさんに負けた人が護衛ッスか……?」
クレセントは悪気はなさそうなのだけど、セラにはしっかりとダメージが入っており、「もう止めてくれぇ……」と頭を抱えていた。再びごめんよ。
「で、二人でレベル上げをしていたんだけど、王女様の容態が悪化して時間が無くなったから急遽メンバーを増やすことにしたんだ。で、このリンデールで一番強いパーティってのが運よく三人だったから、説得して一緒に潜ってもらうことになった」
「おぉ! 何スかその胸アツ展開!? というかこの国最強の人たちって気になるッス! やっぱり自分、強い人と戦うの好きッスから、機会があれば是非手合わせ願いたいッスね!」
俺の語りを聞いたクレセントは、前のめりになりながら興奮した様子で言う。
……本当にわざとじゃないんだ……ちょっともったいぶって話したかっただけなんだ。
セラやシンたちからひしひしと気まずい空気を感じる。
帰還ボタン、押しちゃだめかな? ダメだよな……。
「そ、その……ここにいるセラ以外の三人、『迅雷の軌跡』がそのパーティなんだよな……」
空気、死す!