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ディーノ様から女性陣との関係を確認されたあと、俺はのんびりする間もなく皆と合流し、そのまま陛下との謁見に向かう。セラたちは俺が何を話していたのか気になっている様子だったが、時間もなければ使用人の目もあるので断念した様子。
新居の引き渡しをしてから話すよ――という約束をしてから、俺たちは国王陛下に会うべく謁見の間へと向かった。
「面を上げよ」
国王ゼノからの言葉を受け、俺たち四人はそれぞれ視線を陛下へと向ける。
崩壊前から何度か顔を合わせているが、未だにこの尊大な雰囲気には気圧されてしまう。威圧のスキルを使われていると言われても驚きはしないだろう。
この部屋の中には陛下やディーノ様を初めとして、十人近くの貴族っぽい人たち、そしてメイド服を身に着けた使用人、護衛の騎士の姿が見える。
「探索者パーティASRの諸君、いきなり呼び出してすまないな。まずは窃盗犯の捕縛の話からさせてもらおうか。ディーノ、頼む」
陛下がそう言うと、陛下の隣にひっそりとたたずむ宰相のディーノ様が一歩前へ出て、手元の紙に目を落としながら俺たちの功績を読み上げていく。
内容は……まぁそのままだ。
俺たちが合計100人弱のスリを捕縛し、かつアジトを潰したというものである。
ディーノ様の読み上げた内容に貴族たちがざわついていたが、どれも好意的な反応だと思う。俺に対する悪意も感じないし、妬みの視線なども感じない。
ディーノ様が内容を細かく話し終えると、次の話題は報酬についてのものに。
「お主らが新たに王都に建てるパーティハウス――これの建築費用を今回の報酬と考えておるが、どうだ? 金銭のほうが都合がよければそちらで考えるが」
陛下の問いかけに対し、フェノンは特に間をあけることもなく「陛下の御心のままに」と返事をした。正直、金の有り余っている俺たちにとっては『どっちでも良い。なんなら報酬なんていらない』が本音だもんな。彼女が即答したのも、それがわかっているからだろう。
しかし、また金を使うチャンスを逃してしまったか――今思えばこの世界に来てから金に困ったことが一度もないな。前世とは大違いだ。
スリ捕縛の話が一段落すると、次の話題はAランクダンジョン踏破に関してのものに。
こちらに関しては『今後の活躍に期待する』というような物だけで、特に褒美や称号を貰ったりすることもなく終わった。貴族たちは自国の第一王女の活躍を聞いて大いにざわついているようだったが、ディーノ様に注意されてすぐに大人しくなっていた。
「では、ここからはこまごまとした内容になりますので、ASRの皆さま以外にはご退出をお願いします」
お、どうやら形式ばったお話合いはここで終わりのようだ。
貴族たちが退出していくのを、安堵の息を吐きながら待っていると、すぐ隣のノアが周囲にバレないような小声で声を掛けてきた。
「これから使用人の話をするみたいだよ」
あぁ、なるほど。
そりゃわざわざ貴族たちに話す内容でもないもんな。
なんにせよお偉いさんに囲まれていると落ち着かないから助かったわ。
「僕はそうでもないかなぁ」
だろうよ。元創造神様が貴族相手に緊張していたら笑うわ。
クスクスと笑うノアを横目で見ていると、扉の閉まる音が聞こえてきた。どうやら、貴族たちは退出した様子。
部屋の中に残っているのは陛下、ディーノ様、メイドが一人と、護衛が二人。俺たちASRを含めると合計十人だ。
「ふぅ……」
玉座に腰を下ろしていた陛下が、少し気を緩めたように息を吐いた。
どうやら彼も彼で貴族たち相手に気を張っていた様子。王様は大変だな。
「皆も楽にしてよいぞ、ここからは非公式の場としよう。そちらのほうがお主らも話しやすいだろう?」
「陛下がそうしたいだけでしょうに……あぁ皆さん、陛下がこの調子ですので、椅子はありませんがどうぞ言葉通り楽にしてください」
ディーノ様が呆れた様子でそう言うと、陛下は少し不満そうな表情を浮かべながらも特に言い返すことも無く、背もたれに体重をかける。
「まず先に伝達事項だな――新たな物件の使用人だが、フェノンの要望通りの人物を手配しておいたぞ。すでにそちらで仕事をしているはずだから、顔合わせは引き渡しの時になるな」
「ありがとうございます、お父様。人数はどれほどでしょう?」
「少ない人数と言っていたからな、メイド二人に執事が一人、警備が三人だ」
ふむ……メイドや執事の人数に関してはわからないが、警備は王女様が暮らす場所ということを考えれば少ないはずだ。
だけどまぁ、暮らしているメンバーがメンバーだしなぁ。全員が全員、警備よりも強いっていうよくわからない状況である。
彼らにお給金を払うことで、ようやく継続的な出費ができそうだ。出費ができて喜ぶって本当謎だわ。
「わかっているとは思うが、フェノン、それとセラ=ベルノート。くれぐれもパーティハウスに泊まることのないようにな。日中は好きなだけ過ごしても構わないが、一晩過ごすとなると間違いなく噂になる」
「あら、お父様。私は噂になっても一向に構いませんが」
「お前は本当に……エスアールのことになると急に強気になるな」
「陛下。私も望むところです」
「『剣姫』もだったな……そういえば」
陛下は悩まし気に手を額に当てると、視線を俺のほうへと向ける。
「ディーノからも聞いたと思うが、エスアールにはこれといった実績がない。私としては当人たちの気持ちを一番に優先したいと思うが、彼女たちには明確な理由が必要だ。特にフェノンは他国からきた婚約の話をたくさん蹴っているからな」
「え? そうだったのか?」
俺は思わず、横を向いてフェノンに問いかける。彼女は「もちろんです!」と元気よく答えた。
元気が良いのは大変よろしいが、その受け答えはこの場で適切なのか? 否じゃない?
「王族の血が――だとか、国の為にならないだとか――そういう話があるのですよ。平民であるエスアール殿にはあまり関わりのない話だと思いますが、貴族たちは気に掛けますから」
「……確かに俺にはあまり関わりのない話で、関わりたくない話ですね。でも、あれでしょ。俺が称号持ちとかになれば、許されるんですよね?」
そう俺が質問すると陛下はゆっくりと頷き、そして重々しい口調で答える。
「そう……だな。だがエスアールはフェノンやセラと同じパーティメンバーだ。たとえパーティで実績を残したとしても、エスアールのプラス要素にはならない。元が貴族であり称号持ちのセラにはすでに公爵レベルの地位があると言ってもいい、そしてフェノンは王族だからな。ゆえに平民であるエスアールは、一人で何かを成し遂げる必要があると言っていいだろう」
「それも、彼女たちと並びたてるような、大きな実績です」
追い打ちをかけるように、ディーノ様が言う。
申し訳なさそうな表情を浮かべていたが、その表情はすぐに困惑へと変わっていく。
きっと、俺が笑っているからだろう。
だって、ねぇ?
彼らは困難な事を言っている様子だが、ソロプレイは俺の得意分野だからなぁ。