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――30分前。
『ケケケケケ!』
「うわぁ……、夜中に会いたくないタイプのやつだな」
結界の中を彷徨っていると宙に浮かぶ能楽のお面のような化け物に出くわしてしまった。
お面は不気味な笑い声を上げると突然その数を増やし、瞬く間に俺を取り囲んでしまう。
とりあえずは目の前のこのクソ気色悪いお面を『鑑定』してみるか、
――――
呪いの能面 怨霊
状態:飢餓 憤怒
補足:能楽で名声と富を得ながら、裏で殺人を繰り返し、処刑によって最期を迎えた狂気の能楽師の怨念が宿った面。
人間を見つければ自動で追尾し、大量の分身を形成した後、自身をその人間に被せて顔からその肉を食らう。
:現在は伊織修の真後ろにいる本体を守るように分身が展開されている。
――
ここに来るまで色々な化け物を見てきたけど、あの妖刀と同じ呪いのアイテムタイプのやつはこれが初めてかな。
ま、ともかく俺がやることは変わらない。
「逃げられる前に全部ぶっ壊す!」
俺はスキル『身体強化』を発動させると、その拳を勢いよく地面に叩きつける。
するとその破片が舞い上がり呪いの能面の分身は動くことも出来ず、1つ、また1つと着実に潰していく。
『……!?』
そしてその中に1体だけ、破片に巻き込まれないように逃げる面の姿があった。
「そんで最後はてめえをぶっ壊す!」
今度は今度は足に『身体強化』を発動させると、呪いの能面の本体を貫く。
「これでこの階層の化け物は大体片付けたかな。っと」
敵を倒して安堵のため息をついていると、久しぶりにあの感覚を味わう。
「『ステータス』」
―――
伊織修 Lv121 人間
称号【名を冠する者を撃破せし者】
HP36000/36000
MP980/980
SP680
STR190
VIT180
DEX180
AGI195
INT170
エクストラスキル スキル貸与
スキル 鑑定 万能翻訳 空間転移魔法 認識阻害魔法 アイテムボックス 氷結魔法 治癒魔法 風魔法 水魔法 追跡・探知魔法
身体強化 身体強化(中) ディスペル マジックカウンター 感覚共有
設計 鍛冶技巧
―――
おお、久しぶりにレベルアップしたな。
これでまたMPを気にすることなく暴れ回ることができる。
(さて、ぼちぼち別の階層に移動するとしますかね)
久遠玄治の【選定の儀式】を観覧していた時、外に展開された水球に浮かんでいた迷宮は全部で5層だった。
そしてこの階層には下へ向かうための階段や元の世界に戻るための扉などは存在しない。
茨によって大きく改変されている可能性もあるが、とりあえずここが最下層なのは間違いないだろう。
だったら俺のするべきことは至極簡単、久遠たちを探しつつ上を目指す、それだけだ。
「……!」
そんなことを考えていると背後に何者かの気配を感じた。
俺はゆっくりと視線を後方に向けるが、そこには何もいない。
ただの気のせいか、そう思いかけたその矢先。
『キシャアアアア!!』
「うおっと」
突然の雄叫びと共に黒く滑った鱗に覆われた巨大なトカゲのような腕が俺を押し潰そうとしてきた。
それをジャンプして躱すと俺は自分を攻撃してきた者の正体を確かめる。
「これはまた、文字通りの化け物だな……」
そこにいたのは6つの脚に4つの赤い目玉を持ち、長い舌を口から出している超巨大なトカゲだった。
『シャアアアア……』
強襲に失敗した怪物トカゲは俺から距離を取る。
そして――。
「おいおい、マジかよ!?」
なんとトカゲはその体を透明化してみせたのだ。
ただでさえ巨体な上に6つも脚と4つの目を持つという個性の塊なのに、さらに透明化能力まで持っているとは。
『キシャアアッ!』
幸いなことはこの化け物トカゲは攻撃の瞬間に叫ぶことと、その際に実体化するということだろうか。
それと奴の様子を確認するに、あれは透明化していることは確かだが本当に姿を消しているのではなくカメレオンのように体表を変化させているようだ。
何にせよ現状はそう簡単に捕まることはないだろうが、このままではじり貧だ。何か奴の姿を捉え続ける方法を探さないと……。
「! これは……」
その時、俺の手のひらに桜の花びらが落ちてくる。
ここまでドタバタ大騒ぎしていたから、その衝撃で落ちてきてしまったのだろう。
うん? いや待てよ。この花びらを利用すればもしかしたら――。
(『設計』『鍛冶技巧』!)
俺は即座にその花びらを素材にして2つのスキルを発動し、即席のペイントボールのようなものを作成する。
そしてまたトカゲの化け物が襲いかかってきたその瞬間、俺はその4つの目の1つにそのペイントボール擬きを全力投球した。
『ギシャアアアア!?』
眼球に異物をぶつけられたトカゲの化け物は激しく苦しむ。
その隙を逃すことなく俺はトカゲの尻尾を掴むと、ハンマー投げのように回転する。
「おっらあ!」
そして勢いが最高潮に達したそのタイミングで俺はその手から化け物トカゲの尻尾を離す。
『ギャギャアアア!?』
突然空中に放り投げられた化け物トカゲはその6本の巨大な腕を激しく動かして壁に掴もうと試みるが、それでどうにかなるはずもなく――。
『グギュアアアア――……』
化け物トカゲは透明な壁を突き破り、そこにいた何か巨大な人型実体と激突する。
その刹那。
「あっ」
その巨大人型実体の近くに人影のようなものがあることに気づいてしまう。
もしかしてあれ、巻き込まれた人間だったのでは……?
「やっべ……!」
俺は全速力でトカゲの落下地点に駆け出す。
それからほどなくして化け物トカゲの死体と、それに押し潰された状態の猿の化け物の集団が視界に入る。
けどそんなことはどうだっていい。あそこにいた人影がどうなったか、それを確かめないと。
「おーい、誰かいたようだけど大丈夫か!?」
そんなことを叫びながら死体の山を漁ろうとした、その時。
「あ、あの……!」
声をかけられたので振り向くと、そこには砂ぼこりで汚れた10歳かそこらであろう少年と少女の姿があった。
初めての生き残りの発見に一瞬安堵のため息をつきそうになるが、巻き込まれた者がいる可能性がある以上まだ喜ぶわけにはいかない。
「ごめん、無茶な方法であのトカゲをここに飛ばした。君たち以外に巻き込まれた人はいないかい?」
「い、いえ。この部屋にいた人は僕たちだけです」
「そ、それよりお礼を言わせてください!」
お礼? 少年たちの言葉に疑問を抱いていると彼らは俺の前に揃って並び立ち、そして。
「「僕(私)たちを助けてくれてありがとうございました!」」
んんんんん?